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「エウカリスト」

「常世の暁」(6000字)
太陽の動きが止まり、

この街は永遠に終わることのない夕焼けに閉ざされた。
一部の人々はビルの屋上から身投げをし、
残された一部の人間によってたくさんの詩が作られた。
二十四時間夕焼けを見詰め続けると、時に人は狂ってしまうらしい。
一日を通して空がずっと夕焼けの街に暮らす昆虫学者の「私」は、

幻と呼ばれる新種の蝶の目撃情報を耳にする。

 

「黄金の暁」(12000字)
光り輝く舟歌、眠らない人造人間が見た夢、

宇宙に響く「終わり」の音色――
地球は滅亡し、 人類という種の存続は

眠れる一〇万三〇〇人の人間に託された。
そんな彼等を管理するのは人造人間メトセラ。

彼の脳は狂気とは完全に無縁の筈だった。

 

「リカーシヴ・コクーン」(20000字)
この世界を作った上位者の思惑が知りたい。
東雲は漆黒の球体を使った実験を開始する。
そこにホムンクルスと呼ばれる知性体が宿った時、
東雲は再帰する世界の構造に巻き込まれていく。
怪しげな蟲は語る。
――私はアウターゾーン教会の潜入工作員だ。

 

「エウカリスト」(19000字)
終わる世界の幻想と、
やがて来る悪夢の産声。
作家として困窮した私は、
名も知れぬ異国の地で、

見るもグロテスクな「天使の肉」を食べる「聖餐(エウカリスト)」を

目撃する。
商人は怪しく誘惑する
これを食べれば、僕は今一度作家として成功できるのだと。

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​「エモーション」

「それでも、歩く」(7500字)

最果てと呼ばれる大地で旅を続ける一人の旅人と一匹の人語を解する雌犬。

彼等の目的地はトールライトと呼ばれる光の光線——そこに辿り着いた時、

どんな願いも叶うのだと言う。

旅人は死別した女性ともう一度だけ会うために、

この大地にやってきたと語った。

 

「ペール・スーパーノヴァ」(7800字)

終末戦争の危機に晒されたとある惑星で、

かつて永遠を近いながら別れを遂げた、二人の男女の物語。

これは、どこか遠くの世界の終わりが、別の世界の始まりになる物語。

 

「星屑の街」(5700字)

彼女の家族が移民計画に選ばれて地球を旅立った。

僕の初恋は一年に一度の手紙の交換に託された。

移民計画によって切り離された僕と彼女は、

年に一度だけ手紙を交換する。

 

「ミルク」(23000字)

私は死んでいる。

私は死にたい。

私は死なねばならない。

黒い烏が空を覆い、

誰もが前向きになることを諦めた世界で、

アル中の私は明日を求めて荒廃した街を奔走する。

私はあるとき、悪友のカレルと、

ミルクと呼ばれる謎の飲み物を手に入れる。

 

「エモーション」(21000字)

脳内エントロピー希薄化症候群——

それは、脳内の記憶が少しずつ削除されていく奇病。

やがて、何もかもを忘れ去った時、

僕は呼吸することすらままならない廃人になるのだと言う。

少しずつ、未来が削り取られていく。

そんな日々の中で、僕は巨人の夢を見る。

そして、エギーと名乗る猫が現れる。

「エレクトロ」​

『ユースフルアサイラム』
現実世界は少しずつ衰退し、狂い始めている……。
戦場を精巧に模した仮想現実型ゲーム「アジール」に魅了された2人の少女は、

既に誰もが羨むハイレベルへと到達していた。

目下の悩みは次なるレベルアップまで

気の遠くなるような量の経験値が必要なこと。
忌むべき停滞と退屈な未来。
ヒグラシの鳴き声が聞こえるコンビニのイートインで、

少女が告げる。
決して倒すことができないアジールの亡霊。

そいつを倒すことができれば法外な経験値がもらえるのだ。
しかしそれは「世界」と「アジール」に隠された秘密へ至る

秘められた鍵穴だった。

『ワードオブザボイス』
電脳やネットを筆頭としたテクノロジーの実用化と普及は

人類に幸福と繁栄をもたらす筈だった。
しかし、世界は治療の機会を逃し続けながら

肥大する病めるディストピアと化していた。
かつて抱いた夢こそあったが、どうしようもなく行き詰まり、

日々益体のない妄想を供する電脳麻薬「転生」に耽る「私」は、

ある日強盗に遭遇する。

安っぽい脳に風穴が空いて

晴れてエンディングを迎えるのかと思いきや、

そこにひとつの声を聞く。
「俺の兄貴に手を出そうなんて、

随分と命知らずな輩もいたもんだな」
それは失踪していた弟の声だった。

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