【評価7.9/10】美しい森林と素朴な漁業。静かな村「ヌースフィヨルド」で滋味深い楽しさを満喫しよう。
- 下村ケイ
- 4月23日
- 読了時間: 19分
更新日:4 日前

●勝利点のもらいかた
①ボード上の建物による得点

②船による得点
毎ラウンドはじめに収入として魚がもらえますが、漁獲量を上げるには漁船を増やす必要があります。
その漁船ごとに勝利点がもらえます。

③空マスによる失点
森林タイルも建物カードもおかれていない空き地1マスにつき、マイナス1点です。
④1金=1勝利点 & 手元にある発行済みの株券
ゲーム終了時に残った1金につき1勝利点がもらえます。
あくまで「1金=1勝利点」なので、例えば建物の勝利点が5点分あっても、コストとして4金が必要なら実質的に1点分しか伸びないのとほぼ同義となります。
また、後述する「発行済みの株券」も手元にある分は1つにつき1点になります。

●ゲーム概要
スタピーが自動で移っていくタイプのワカプレです。
ワーカー数は最初から3人の固定。
勝利点の項目で書いた通り、建物や船を作るのが主な目的になります。
そのために必要なコストは主に3種類。
木材と魚とお金です。

それらのコストをいかに集めるかを書けば、なんとなくゲームの概要が見えてくると思います。
①木材の集め方

まずは「伐採」から。
個人ボードにはゲーム開始時から計4枚の森林タイルが配置されています。(4枚目は既に置かれた森林タイルの上に重ねます)

この森林タイル1枚を取り除くことで、木材5つがもらえます。
つまり、伐採を続けていくといずれ森が枯れます。
という訳で、サスティナブルな林業ともいうべき「植林」というアクションも存在します。こちらは個人ボード上に森林タイルを2枚配置できます。
続いて「間伐」
こちらは個人ボード上の森林タイルの数を参照して、その分だけ木材がもらえます。
つまり、植林によって森を増やすと一度の間伐で手に入る木材の量が底上げされます。
②魚の集め方
ヌースフィヨルドの大きな特徴のひとつ。
各ラウンドの開始時、持っている船に応じて魚の漁獲量が決まり、所定の順番に沿って魚を分配していきます。

貯蓄というのは個人ボード上のスペースであり、
1,魚は8匹まで置けない。
2,「取り崩し」というアクションをしないとおろせない
という制約が存在します。
船をたくさん建造しても、長老に分配する分や、次に書く「発行済みの株券」が手元にないと必ずしも手元にたくさん湧く訳ではないのです。なんなら他プレイヤーの発行済み株券を持っていると毎ラウンドの配当として魚がもらえるので船がたくさんなくてもそこそこおいしい思いができたりもします。
③お金
お金をもらえるアクションは、建物カードによる効果を除くと主に3つ。
1,1金をもらう
単純明快。使いどころ次第では有用なアクションだと思います。
2,株券を発行する。

ゲーム開始時からこのように発行済み株券と未発行株券を持っているのですが、

株券を発行することで、2金がもらえます。そして、メインボードに置かれた株券は1枚1金(中盤以降で割引あり)で誰でも買えるようになります。自分で買い戻すことももちろん可能です。
手元にある発行済株券はだれのものであろうが1枚1点になる上に、先ほど書いた魚の配当で、株券の所有者から魚がもらえたりします。
3,長老のテーブルに魚を給仕する
このゲームには「長老」と呼ばれる存在がいて、彼ら用のテーブルに魚を置いていくことで、1皿につき1金もらえます。

このように、要求される魚の数は皿がすすむほど大きくなりますが、魚さえあれば一気に多額のお金を獲得することができますし、このテーブルに並んだ魚を消費することで後述の「長老カード」を起動することができます。
なんとも不思議なインタラクションが漁村に漂っておるのが想像できるでしょうか。
〇わたしだけの助っ人。頼もしい長老たち

盤面に並んだ長老はお招きすることで、自分専用のアクションスペースになります。メインボードに1マスしかない「船の建設」と同じ効果を持つため、実質自分専用の「建設アクション」になる長老や、森林タイルをまとめて取り除く代わりに木材に加えて貴重なお金がもらえたりする長老など、使いどころによってはなかなか強力なはたらきをしてくれるカードが揃っています。
起動にはコストとして先ほど書いた「テーブル上の魚」が必要になりますが、一度自分のボードにお招きした長老を他のプレイヤーが使うことはできないためワカプレにおける早取りを考慮せずに独占できると考えると、やはり強力なのでしょう。
〇ゲームも大詰め。チャンスを活かせCカード

ひとつのデッキにはそれぞれA、B、Cのカードがあり、ゲーム開始時から場に並んでいるのはそのうちのAとBのみ。
では、Cカードはどのタイミングで登場するのかというと、Xラウンド@@から。まずこのラウンドではCカードが手札として4枚配られます。その後、規定のラウンド数が経過すると手札に残っていたカードはすべて場に移動となり公開され、他のプレイヤーも建設することができるようになります。
当然のことながら公開のタイミングまでは自分だけが手札を見ることができる訳で、それを建設できるのもまた自分だけ。Cカードの中にはAやBと比較するとやや派手な効果を持つカードやガッツリと得点に絡むカードがあったりします。それを手札として独占しているうちにどれを建設するか、どれから建設するかの取捨選択も静かですか燃えます。
●感想
株券を軸に行き交う魚たち。木材を集めるにあたって伐採か植林による共生かをやんわり迫られる自然派リソースマネジメントとそれらの選択を特徴づける建物カードたち。魚を食わねば働かないけどここぞのときに自分だけの力になってくれる長老たちと過ごす漁村的スローライフ。
そしてそんな悠長な雰囲気あるいは戦略を逼迫するかの如くあっという間に終わる軽さと鋭さ。そこそこ悩んだりしたのに1時間を切ってて驚きます。これは平日夜などに重宝しそう!
と言う訳で今回もヌースフィヨルドの魅力や個性をお伝えできればと思います。
○木材もお魚もお金も単なる「数値」じゃない。想像力を刺激する「資源」たち
決して潤沢とは言えなくともなんとかリソースを捻出して建築する建物を取捨選択しつつ得点と優位な盤面を構築するところは定番なウヴェ氏メカニズムと言う感じで安定の面白さですが、本作ではそれら「リソース」ごとの個性の
ようなものがシステム上のルールに自然に盛り込まれております。
例えばアグリコラでは毎ラウンド木材が確定で3つずつ累積していきます。これは石材の実に3倍という物量であり、その差分によって「ありふれた資材でだけどその分いろんな機会で必要になってくる木材」と「高級な資源で序盤ではアクセスできないけど得点を伸ばす上で重要になってくる石材」といった個性を感じることが可能でしたが、敢えて意地の悪い言い方をすれば使い道に違いがあるだけで累積の仕方それ自体には大きな違いはありませんでした。
(それが不足だとか悪いだとかという話がしたい訳ではありませんし、何度もアグリコラを引き合いに出してしまうのはそれだけアグリコラが普遍的な完成度を誇っているからでもあります)

話をヌースフィヨルドに戻しましょう。
〇まだ人が木々と無縁ではいられなかった頃のハナシ。

ルール概説でもさらりと触れた「伐採」と「間伐」です。
初期セットアップ上ではわずか木材ひとつ分の差しかありませんが、タイトなリソースマネジメントにおいてこの1個を笑う者は1個に泣くと相場が決まっております。と言う訳で「伐採」のほうが短期的に考えるなら木材はたくさん手に入ります。しかし、それは木々を切り開いた上での優位性。遅かれ早かれ森林タイルは枯渇し、木材は手に入らなくなります。不幸中の幸いがあるとすれば本作は中量級であり、枯渇によるどん詰まりが来るよりも先にゲームが終わることもままあるということですが、「伐採」により個人ボードの発展を効率的且つ効果的に行うほど「枯渇」が早まってしまうのです。
対する「間伐」ですが、本作の「植林」というアクション。一手番を森林タイルの配置に費やすのですと、間伐をしたときの獲得木材数がほんの少しだけ増えます。
アグリコラでは一意的に累積するのみだった木材の獲得方法ですが、ヌースフィヨルドではプレイヤーの価値観や考え方によって「枯渇と背中合わせの伐採を繰り返すか」「サステナブルな間伐を重視するか」或いは「バランスを重視して適宜使い分けるか」という選択の余地があり、それがために「木材」というリソースにある種の温度感のようなものを感じられるんですよね。その温度感とは自由度の反作用であり、枯渇に対する責任や、さもなくば迂遠にも思える植林の手間暇などが含まれます。
そしてここまでをシステムとして盛り込むことで、木材というリソースの個性を鮮やかに演出し、のどかな漁村の空気感を表現することに成功しているように思えます。
〇森林と建物カードの相補的な立ち位置について
道中建築することになる建物カードの中には、それこそ文字通りの意味で「森との関わりを定義しようとする」カードもいくつか登場します。

いかにして木々と向き合うか。選択の中に自由があり、自ら選んだスタンスの向こうに香り立つのどかな漁村の空気感。それが1時間弱でパッケージングされた中量級ゲームで楽しめるのはすごいことだと思います。
〇あるいは配当としての魚
もう一つ、ヌースフィヨルドに欠かせないリソースが「魚」であります。アグリコラなどでは頑張って作ったご飯でワーカーを食べさせねばなりませんでしたが、本作で魚を食べるのは専ら長老です。

ただ、記事を書いておいてこんなことを言うのはどうなんだという感じなのですが、ヌースフィヨルドにおける魚という概念が自分はいまひとつ理解しきれていない感じがします。大抵のゲームにおいて資源長者になることは勝ちへの近道ですしヌースフィヨルドにおいても大体はその傾向があるのですが、必ずしも漁獲量を上げるために船を建造することがゲームにおいて不可欠…という訳でもないんですよね。実際、ろくに漁獲量を上げずに勝利点が伸びたりしたゲームも何度かありまして。
なので一元的に「魚とはなんなのか」を考えるよりもむしろ、魚を前提としない戦略もある程度は通用するというヌースフィヨルドの懐の深さに着目するほうが有意義な気がします。
例えば株券の購入に重きを置けば毎ラウンドはじめに配当として魚が湧きますし、建築コストとして大量の魚を要求するタイプの建物カードを選択肢から外せばよい訳ですし、中では魚を湧かせるタイプの建物カードも存在します。
魚が時として不要、というよりは「漁獲量を底上げする漁船に必ずしも拘らなくても良い」と言った方が正確そうですが、なんにせよ懐の深さがそこにあり、それはつまりいろんな戦略を好みに合わせて試してみたくなる、ということでもあります。
〇だがしかし、
いざ魚というリソースを重視し始めると、漁村の生活感や生活の糧でありながらどこか気ままな漁業の雰囲気をたっぷり堪能できます。毎ラウンドはじめにたくさんの魚を勘定するのはシンプルな快感原則ですし、小振りな魚の木駒を指先でつまんだり数えたりするのも愉快です。それを長老や株券の配当として物理的に分配するのもボドゲならではのアナログな楽しさといいますか。決して数値にしたりできない部分ではありますが、素敵です。
また、漁獲量を増やしたとして、件の分配がありますし、発行済みの株券に配当として割り振る魚以外は「倉庫」にいくのもボドゲとしてユニークです。倉庫にある魚は銀行よろしく「貯蓄の取り崩し」というアクションをしないと手元に持って来れないですし、倉庫にしまえる魚も上限が決まっているなど、随所にぐぬぬとなってしまうようなままならなさが散りばめられています。タイトなリソースマネジメントの側面はしっかりとありつつ、どこか都会とは違う時間の流れる漁村らしいゆるやかな側面もありつつ。魚に関しましては、このクッションひとつ挟むかんじがまどころしつつも世界観の息遣いを感じさせ、それがために本作を「ただのリソースこねこねボードゲーム」とは違うものにしているように思えます。
よりシステム的に言うのなら、、
ただでさえ使用するデッキや出現するカードによって取り得る戦略の幅がかわるのに、パッと分かる最適解を限りなく曖昧にするところに「やりこみがい」や「やりごたえ」を感じます。それを指して、本作を「上級者向け」と形容するのは簡単ですが、一概にプレイ回数を重ねた経験者が一方的に有利を食える訳でもないところなんかはむしろ「もうすこしだけ複雑なボドゲに挑戦してみたい」みたいな方々にもオススメできるポイントなのかなともおもったり。
〇牧歌的な世界観に芽吹く資本主義は、個性的なインタラクションの触媒
それでは株券についての話をしようと思います。このゲーム、お金を湧かせるには食卓に魚を並べるか、さもなくば株券を発行する必要があります。本作では「1金=1勝利点」なためお金の重要性がそこそこ高く、おまけに強力な建物カードはコストでお金を要求することも多く、そしてゲーム終了時に未発行のまま残っていた株券は1枚につきマイナス1点を食らいます。反対に、手元にある(購入した)発行済み株式は1点になります。

だもんだから「株券の発行」を無視したままゲームを進めるのはあまり現実的ではありませんが、、この「株券」という存在――正確には「株券を介して展開されるインタラクション」ですが、これがまた前述の魚と同じくらい不思議な感触がします。
その感触の出所はどこにあるのかと考えたのですが、たぶんそれは2つありまして。
ひとつは「発行した株券が売れ残っても痛手にはならないし、なんなら自分で買い戻した方が得点に結びつきやすいこと」
もうひとつは「配当が魚であること」です。
株券という字面だけ見ると、そこまでいかないにせよ18系のゲームを連想してきりきりしてしまいそうですが、ヌースフィヨルドにおける株券はもっと地域的といいますか。ゲーム終盤になると株券の購入に割引が発生するのは実質的に株価が下がっているようなものですが、発行したプレイヤーは変わらずに2金もらえます。
そして発行した株券を相手に購入されても、それ自体ではそこまで痛手にならないんですよね。配当はお金ではなくあくまで魚なので、漁船をもってさえいれば自分の手元に入ってくる魚の数もそこまで変わりません。
無論、ボドゲにおける勝敗は相対差なので相手が配当分のアドを得続けている限り潜在的な点差は開きかねないのですが、あくまで私が言いたいのは「株券を介したインタラクションでは、しくじる=したいことができなくなる」というレベルのシビアさは薄いということです。
私がプレイする環境が専ら2人プレイなので、多人数でやるともっと多角的で奥の深い読み合いとかが発生するかもしれませんが、2人プレイだと「自分が買うか、相手が買うか」の2択。なんともまぁのどかと言いますか、漁村ならではの穏やかさみたいなものがあります。
ちなみに我が家ではラウンド開始時に魚を渡すとき「不労所得〜」と呟くのが慣例になっています。
なんだそれ。
○可変部分がもたらすリプレイ性――末永く愛することができる逸品
建物カードにより、様々なコストが要求されるが、様々なリターンがもらえる。この組み合わせの妙で戦略性の幅が広がるのはウヴェのボドゲをプレイしたことのある方ならおなじみかもしれません。ヌースフィヨルドの建物カードも実に多種多様な特殊効果を持っており、見ているだけでとてもワクワクします。
また要求される建設コストもさまざまでして、これによって「木に重きをおくのか」「魚に重きを置くのか」「お金に重きを置くのか」という具合にとりうる戦略の選択肢が多く、また「この建物カードに隣接するXによって~」という、得点の算出に立地条件を参照するカードも存在するため、いかな建物カードで盤面を埋めるかも問われ、毎度毎度絶妙に悩ましく、リプレイ性も抜群です。自分が好きな戦法を手探りで見つけていく楽しみもありますし、反対にサプライに並ぶカードから代替戦法を模索する必要に迫られることもあります。

カードの枚数に物をいわせて「ほらたくさん遊べるだろう」という手法に対しては別段なんとも思いませんが、カードプールに幅がありすぎるとドローと言う行為へのリターンに揺らぎが生まれすぎてしまい、結果的に運要素の割合が大きくなってしまうのも事実です。
ですが、ヌースフィヨルド(の2人プレイ)ではデッキという形でカードプールを小分けにしつつ、積極的ドローとでも言うべきアクションを排することで運要素の割合を最小限に抑えつつもゲームごとに違った展開を生みやすい仕組みになっています。(人数が増えるとカードの補充などが発生して、いわゆるめくれ運の要素も生じるかもですが)
デッキによってはシンプルなアッパー気味の調整が入ったり、あるいはマイナス勝利点をもたらす建物を筆頭としたトリッキーなカードが増えたりと、毎回のゲームの展開がなかなか変わります。そのような調整が効くのも、デッキごとに分けているお陰なのでしょう。
また登場する建物カードの構成によって各長老カードの有用性も少しずつ変わるため定石めいたものが定まりにくく、ゲームにごとにある程度の新鮮さを感じながら戦略を練る楽しみもあります。そして長老カードも早取りなので自分のとりたい戦術により、どの長老をお招きするのかも変わります。
タイパとコスパの良さで言えば、ヌースフィヨルドは文字通り破格のボードゲームと言えるでしょう。

●レビューチェックリスト
1:深さ/複雑さ
「意思決定において、どれほどの困難≒楽しさが伴うか」
3.8点。ルール量やゲームを構成する要素は決して多くはないはずなのに、自分が思い描いた戦略イメージを実現しようとする上でそれぞれの要素が絶妙に噛みあい意思決定を悩ましいものにしている。さりとて飯供給に代表されるきついノルマの類はないため息苦しさと背中合わせのタイトさはそこまでなく、ある種の気軽さをもって悩むことができる。中量級としてはかなり良質な深さが楽しめる。
2:メカニズム
「ゲームの設計はどれほど美しいか」
4.5点。本記事でたくさん書いたつもりだが、森林タイルとの向き合い方で木材の集め方や使い方それ自体に個性が生まれたり、株券を会する有機的なインタラクションや、通貨の如く行ったり来たりする魚というリソース、長老と呼ばれるお助け人材の活用の仕方、それらが組み合わさって醸成されるメカニズムとしての漁村の空気感は美しいと言っても過言ではない。
3:相互作用
「他プレイヤーとの絡みの量、質」
3.5点。ワカプレとしてアクションスペースや建物カードの早取りの妙味はこれでもかと味わえる点で最低限の面白さは保証されている。そこにく加えて株券による不労所得的な魚のやり取りや長老カードを巡る駆け引きなど、本作ならではのユニークな点も愉快だ。ただ深い読み合いの上では刺すか刺されるかの濃密なインタラクションという訳ではない。良くも悪くも相互作用の基本的なベースはオーソドックスなワカプレにある。
4:オリジナリティ
「戦略、メカニズム、テーマはどれほど新鮮でユニークか」
4点。メカニズムの項目でも書いたが、ヌースフィヨルドを構成する要素とそれによってできあがる戦略、メカニズム、テーマはヌースフィヨルドでしか味わえない類のものだとおもう。そしてそれを中量級としてまとめあげたデザイナーさんの力量に驚くばかりである。
5:ムード
「テーマやアートワークはボドゲ体験をどれほど彩るか」
4点。建物カードにイラストがあれば、、と思うのは欲張りすぎなのだろう。ボードに描かれた漁村の背景はとても美しく、また色合いも素敵だ。加えて森林タイルは見た目も手触りも上質。そしてなにより大量に入っている小振りな魚の木駒。そのアナログなテクスチャを通じて感じる「素朴な漁業」の空気感はわくわくするほど強く漂っている。コンパクトなプレイ時間の中で存分にヌースフィヨルドの村のテーマを楽しむことができる。
●主観的点数:4点(5点満点)
〇その理由
私は家系ラーメンが好きだが、あれだけ「強い味」を詰め込めばそりゃ美味しくないはずがない。と考えている。それはボドゲにも言えることで、要素をこれでもかと盛り込んで意思決定のプロセスを限りなく複雑にすれば、よほどの破綻がないかぎり大抵は面白いと感じられるのではないか。とも考えている。私が重量級を好きなだけかもしれないが。
その点、ヌースフィヨルドは2人プレイでおよそ45分しかかからない。あっという間にゲームが終わる。それなのに「初期の、資源も建物も何もないところから恐る恐る発展の一歩目を踏み出す序盤」から始まり、「少しずつ発展が軌道に乗って資源が回るようになり、急速にイメージが形を帯びる中盤」を経由して、「あと数手で終わりという状況でどう立ち回れば勝利点を最大化できるか考える終盤」という、いわばフルコース的に変化するゲーム体験を存分に味わうことができる。
それだけでも十分すごいと思うけど、ヌースフィヨルドはそこにさらに「森林タイルの取り扱い」や「株券を介した魚の配当」などユニークで美しいデザインを違和感なく調和させている。
リプレイ性もなかなか高いので、是非おすすめしたい一作である。
●評価点の算出方法
チェックリストの平均点+主観的点数
●誰がこのゲームを好むだろう
わりといろんな人にオススメしたいし、オススメできるボドゲだと思う。手番数のタイトさ故に無駄打ちをするだけの余裕が少なく、その点を指してか「上級者向け」なる文言を見かけたことがあるけれど、例えば不朽の名作アグリコラに漂うタイトさゆえの閉塞感や読み合いにしくじると取り返しがつかなくなる感じはないので気軽に挑戦してみほしい。また他の重量級にマンネリを感じてきた方もヌースフィヨルドの鋭さというか切れ味の良い面白さはきっと気に入ると思う。
ゲームに占める運要素の部分はそう多くない上に、他のアッパーなボードゲームに比べたら本作もそこそこタイトな方ではあるけど飯供給のきつさとペナルティがないだけでもずっと気が楽だし、いろんな人に(リプレイ性という意味において)末永く愛されるボードゲーム
●テーブル幅
※後日貼ります。
不明点や気になる点、間違いなどありましたらコメントまでお願いいたします。
●宣伝
・短編小説「常世の暁」
24時間夕焼けを見詰め続けていると、時に人は狂ってしまうらしい。
人々はビルの屋上から身投げをし、残された人間によってたくさんの詩が作られた。
昆虫学者として夕焼けの街に暮らす私は、
ある日、幻と呼ばれる蝶の話を耳にする。
(6000字程度。カクヨムにて公開中。画像をクリックすると該当ページに遷移します)
・生き抜け、専ら2人で。
——死ねば全ロスト
それでも僕らは闘う
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夢も 願いも
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